LDの中でも読み書き障害である「ディスレクシア」
前回はエンコーディングとデコーディングについて解説しました。
今回はいくつかの例を元にアセスメントの手法を紹介していきます。
ディスレクシアの定義を確認
そもそも、ディスレクシアの定義はなんでしょうか?
LDの中で「読み書き障害」と呼ばれることは先ほど説明しました。
ただ単に読み書きが苦手な場合がディスレクシアではありません。
以下のような条件が必要です。
- 知的に問題が無い
- 神経学的なものが原因
- その特徴はデコーディングの弱さにある
- 学校での指導方法が原因ではない
などなど
大まかではありますが、このような点をおさえておけば間違いないかと思われます。
文字学習のつまづきポイント
子どもがどこで読み書きの苦手さを感じているか
課題を切り分けていく考え方をお伝えします。
ずばり
「文字と音の対応」です。
文字につまずきがある場合
視知覚の認知能力や協調運動の能力に課題があると考えられます。
音につまずきがある場合は
音韻認識に課題があると考えられます。
両者の対応につまずきがある場合は
対応学習に課題があると考えられます。
実際のアセスメント
さきほどの考え方で
どこにつまずいているのか、アセスメントしていきましょう。
文字練習や音読を嫌がる子
- 1年生
- 読み聞かせを好む
- 文字への関心は無い
- 知的発達に大きな問題はない
- ひらがなが全く読めない
- 音韻認識は、2モーラの逆唱ができず。
- 音韻分解は、モーラ毎にできず
このパターンは知的レベルと比べ、大きく読み能力が低く、音韻認識も未熟なため
ディスレクシアと考えられます。
主な指導・支援方法としては
- 単語のデコーディング指導
- テストの時間延長や問題の読み上げ
- タブレットでの板書撮影
- 音声入力
などが挙げられます。
漢字学習や英語学習に大きな課題がある子
- 4年生
- 知的発達に大きな問題はない
- かな単語の音読スピードは2年生レベル
- 音韻認識のレベルは1年生レベル
- 作文で漢字を使わない
- 促音「っ」の間違い有
こちらもデコーディングの課題と、音韻認識の弱さがあるため、ディスレクシアと考えられます。
主な支援方法として
- 漢字にフリガナをつける
- 問題を読み上げる
などがあります。
長文の読みに課題がある子
- 4年生
- デコーディングは学年相当
- 音韻認識は学年相当
- 行の読み飛ばし
- かって読み
- 内容理解はできる
- 書き誤りがあるが、見直して気づける
- 作文では主語を抜かす・表記の誤りがある
- ADHD
デコーディングと音韻認識ができているため
ディスレクシアではないと考えられます。
上記の読み書き困難は、ADHDの不注意からくるものと考えられます。
読解問題が苦手な子
- デコーディングは優れている
- 音韻認識に問題はない
- ひらがなは正確
- 漢字は正確だが、音が同じで違う漢字にしてしまうことが漢字
- どうして?と問われる問題が苦手
- 状況理解が苦手
- ASD
こちらもデコーディングと音韻認識ができているため
ディスレクシアではないと考えられます。
上記の読解の困難は、ASDの課題からくるものと考えられます。
字が整わず、自分で書いた文字が読めない子
- 4年生
- 字がマス目からはみ出す
- お絵かきや積み木、折り紙やブロックなどを好まない
- 知的発達に問題はない
- 似た文字の書き誤りがある
これは「文字と音の対応」でいうと
文字 視知覚認知 に課題があると考えられます。
そのため、ディスレクシアではないと考えられます。
文字の形が整わない子
- 2年生
- 知的発達に問題はない
- 読み聞かせを好む、文字や絵はあまり見ない
- ハサミが苦手
- 塗り絵は力が入りすぎる
- 視知覚認知の課題は正確
- DCD(発達性協調運動障害)
この場合は、書きの苦手さが「不器用さ」からきています。
そのため、ディスレクシアではないと考えられます。
※補足
ASDとLDの併存は13%程度
ASDとLDとADHDの併存は41%程度
という研究もある
おわりに
3回シリーズでディスレクシアについて解説してきました。
どんな苦手さが根本にあって
読み書きの苦手さにつながっているか?
という流れが分かったと思います。
ディスレクシアの特徴を知り
アセスメント→支援に繋げていけたらなと思います。