【本紹介】マンガ 奥田健次の出張カウンセリング – 自閉症の家族支援物語

本紹介

概要

「子育てブラックジャック」こと臨床心理士の奥田健次先生が、実際に関わってきた子供たちのエピソードを元に、困りごとを解決していく漫画です。

また、以前紹介した「拝啓、アスペルガー先生 マンガ版」の続編のような作品です。
育児や小学校での指導の考え方の参考になります。

はじめにた、奥田健次先生の生い立ちが書かれた後、4つの事例と1つのおまけ漫画で構成されています。

内容

!注意!
ここで行われている支援はプロの臨床家が行っています。
決して真似しないでください。

オムツがはずれないエルモくん

知的障害のある自閉症と診断され、現在は3歳6か月のエルモ君。お母さんはオムツが外れないことに悩んでいます。奥田先生はそのことを、おむつを外すのが怖いからと予想しました。

調べてみると、一度もトイレでしたことが無かったようです。そして奥田先生はそれを「オシッコを空中に飛ばす恐怖症」とお母さんに伝えました。

なぜかというと、以前そのような子のオムツを外し、下半身裸で過ごさせた親がいたそうで…
オシッコが思うようにできないので布製のソファにうつぶせになっておしっこをしたそうです!

つまり、オシッコを空中に飛ばせないということです。

今まで無理やりトイレに座らせようとしていたこともあり、拒否感は強まっています。

ここからが支援法です。

ご両親がエルモくんをトイレに連れていき、それに気づいて泣いて嫌がるエルモくん。
ここで手を離さないように両親はふんばります。

1分経って「2分ももたないか・・・」とつぶやいた奥田先生はそっとチョコを差し出して食べさせます。食いしん坊のエルモくんはなんとそれをぱくっと食べちゃいます。

同じ方法を奥田先生が試すと、トイレに連れていかれる!と気づいたエルモくんはさっきよりもすぐに泣きます。同じようにチョコをあげると、なんとさっきよりも早く泣き止みました。

だんだんとトイレの近くまで行かせてチョコをあげます。

これでようやくトイレまで行くことができました!

次はお家でのトレーニング。

食いしん坊の特性を活かし、家で食事ができるのはなんとトイレだけというルールにしました。
水分すら、トイレで、です。

トイレで座ったら、無事に食べることができるというシステムにします。
オムツはもちろん外します。

その他の工夫はまだまだありますが、なんと2日で空中おしっこに成功!

その後は喜んでトイレに行けるようになりました。

自閉症状の強いジャンくん

ジャンくんは飲まなければいけない大切なお薬があるのですが、なかなか飲めません。味の違いがとってもよく分かるので、何と合わせても拒否してしまいます。

ここで奥田先生は、ジャンくんの好きなお菓子の中から、薬に似ているラムネを選びます。

そして、薬とラムネ・両方をすりばちですりつぶします。

ここから、他の食べ物に薬をまぜるごまかし作戦とは別の方法を使います!

①スプーンでラムネをすくって、食べさせます
②2回目はラムネと見せかけて薬を食べさせます

ラムネ×8→薬×1→ラムネ×8→薬×1

と、ご褒美のラムネを多めに食べさせます。

その次はステップアップで、

「おくすり」と言って、薬を飲む自覚を持たせて飲ませます。
「ラムネ」と言って、ラムネも飲ませます。

なんと、この段階でおくすりだと分かって飲むことができました。

特定の言葉を嫌がるダンテくん

6年生で特別支援学級に在籍しているダンテくんは

「パイナップル」という言葉、物、写真をなぜか嫌がります。
嫌がって、逃げ出してしまう行動もあります。

ここでの支援法は「常識的な対応」をやめることをしてみます。

今までダンテくんは計算ドリルを怖がると、「大丈夫?」と周りの大人が心配してくれました。

その「大丈夫?」と励まされるご褒美と、ドリルをやらなくていい罰の回避がゲットできたわけです。

その結果怖がること=良い事 に繋がってしまったわけですね。

まずは、不自然な流れで会話にパイナップルという言葉を入れます。
「明日の天気はパイナップルくもりのち晴れ」などです。

これを聞いて嫌がって逃げ出したダンテくんを、待ち構えていたお父さんが捕まえて
大好きなアイスクリームを2口食べさせるというご褒美をあげます。

パイナップル+逃げ出さない=ご褒美

という図式を作り上げるわけです。

もちろん前提として、普段はアイスを絶対に食べさせません。

これを繰り返すとダンテくんのほうからパイナップルと言われると「アイス」と言うようになりました。もちろん逃げ出しません。

夢を見るのが怖いマイコちゃん

マイコちゃんは夢を見ると、最後は暗い世界で終わりになってしまうそうです。
それが原因でなかなか眠れません。

奥田先生は4コマ漫画の最後を切り抜き、3コマを見て最後の話を想像してもらうようにしました。
※本当は絵本の方が良いらしいです。

何回やっても、想像するのは暗い結末ばかり・・・

奥田先生はハッピーエンドのお話を考えてマイコちゃんに伝えました。
それに加えて、マイコちゃんにもハッピーエンドの話を考えてもらいました。

それからは、お母さんが一緒にハッピーエンドのお話作りをするようにしました。

今までは、不調なマイコちゃん+寝かせつけているお母さん

楽しいお話を考えるマイコちゃん+楽しいお話を一緒に考えるお母さんという図式にするわけですね。

繰り返すうちに、ぐっすり眠れるようになりました。

おまけ:十津川警部 召還法

おまけの話ですが、すごい手法だ!と思ったので紹介します。

自閉症のアーサくんは、奥田先生が昔から見てきて、今は社会人です。

上司に叱られて奥田先生に「リベンジしたいです!」と相談しました。

この時に、筆談形式の相談に切り替え。

復讐する→ぶん殴る→クビになってもいいと文字化して説明してくれました。

ここで本題の手法の登場です。

「先生、十津川警部と知り合いやねん・・・・今から来てもらおうか?」

アーサくんは焦って「結構です!」

ここからの掛け合いが、面白い&プロの技だな~と思いました。
なんとしても「呼ぼうかな~」という話の流れに持っていくので、アーサくんはかなり焦ります。

この十津川警部 召還法は別名ゆるやかな脅しとされ、
昔からある「おてんとうさまがみているよ」「死んだお母さんが悲しむよ」というブレーキ作用を使った物だそうです。

著者

・奥田健次さん

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