解説
特別支援に関わっていると非常によく出てくる言葉の1つです。
教育以外の分野でも活用されていて、人間がどういう理由でどう行動するのか?
科学的に考えられた理論です。
できるだけ難しい言葉を使わず説明したいと思います。
前提として
ご褒美
罰※1
と行動を結びつけます。
行動は
- キッカケ
- 行動
- 結果
の3種類に分けられます※2
消去
1つ例をあげます。
スーパーで、お買い物にきたお母さんと子どもがいました。
おもちゃが欲しくて(きっかけ)だだをこねています(行動)
「買って買って!」
困ったお母さん・・・
「しょうがないわね・・・今回だけよ」
その子どもはどうなったと思いますか・・・?
もちろん大喜びですよね!
これは
- おもちゃがほしい(キッカケ)
- だだをこねる(行動)
- 買ってもらえる(結果)→ご褒美!
ということは、だだをこねればお得!ということを学習(強化)しちゃいます。
じゃあ買わないようにしよう
- おもちゃがほしい(キッカケ)
- だだをこねる(行動)
- もらえない(結果)
これでおさまれば良いですが、子どもはどうしてもおもちゃが欲しいんです。
さらにだだをこねます!
- おもちゃがほしい(キッカケ)
- もっとだだをこねる(行動)
しょうがないわね
これでお母さんが諦めてしまったら・・・
もっとだだをこねればいいんだ!と子どもは学習します。
何を言われても買わないという信念をもち、お母さんが諦めなければやがて
だだをこねても、買ってもらえないんだ。やーめた。
となって、だだをこねなくなります(消去)
ちなみに、買ってもらいたくてどんどんだだをこねるのが強くなる現象を(消去バースト)と言います。
これをやる場合、根競べだと思って取り組んだほうがいいかもしれません。
ご褒美
ここが応用行動分析・ABAのかんじんかなめです!
ご褒美を上手く使って、困りを減らして伸ばしたい力を伸ばすことが一番大切かつ、難しい所です。
例えば、苦手な算数のプリントをやらせたいとします。
プリントを1枚やれば、その子の好きなお菓子のチョコを1個もらえるというルールにして
- プリントをやらなければいけない(きっかけ)
- プリントをやる(行動)
- チョコがもらえる(結果)ご褒美
とすればプリントをやる=ご褒美
になって、苦手だけど頑張ればいいことがあるということを学習し、すすんで取り組むようになります。
事前に難しいと言ったのはかなり多くの注意点やコツがあることです。
コツ①スモールステップ
そもそも苦手なプリントなのですから、やるのも嫌なはずです。
問題数を減らす。この時間でこの問題をやるなどのゴールの視覚化。
ご褒美は少しずつ減らす。
の工夫が必要で、丁度いい量や間隔でできればあなたはプロです。
コツ②ご褒美は何にする?
子どもによって何がご褒美かは違います。
褒めるだけでもいいかもしれませんが、誉め方や言葉選びも必要です。
物にすると、だんだん欲しいものが高価なものになるのはNGです。
継続的にやらなければいけませんから、シールやちょっとしたお菓子が良いですが、
ご褒美と思えるものでなければいけません。
コツ③ご褒美はとにかくすぐに!
プリントができた後、10分後くらいにお菓子を上げたりすると、ご褒美の効果がほとんどなくなってしまいます。プリントをやる=お菓子の結びつきを強くするには、時間が短ければ短いほど良いのです。教育技術で「良い事をしたらすぐ褒める」のすぐは本当に一瞬です。
ただ、コツ①のスモールステップの最後の方であればご褒美を減らしたり、後の方にしたりしてもいいかもしれません。
コツ④暴力やかんしゃくへの対応はさらに難しい
タイムアウト法といって、暴力があった時にその場から離れさせクールダウンさせる方法があります。これは子供との関係性や、どの場所でどうやって移動させて落ち着かせるか?などのスキルが必要で、注意の仕方やご褒美のあげ方も事前に考えておかなければいけません。
そしてそもそもやらなきゃいけないのか?も考えましょう。
本人にとって、算数のプリントをやることに意味はあるのか?
LDの場合はプリントをやるのではなく、違うアプローチが必要になるでしょう。
そこも総合的に考えることが大切です。
ちなみに、食いしん坊の子はご褒美が簡単です。学校で使えないのが残念です。
※給食はすぐにご褒美ではないので難しいのです。
罰
罰はあまり使いません。
昔は体罰などがあり、悪いことがあれば暴力をされる。暴言をはかれる。といった罰がありましたが、現在はありません。
悪いことをしたら悪いことがあるのは当然じゃない?
私もそう思います。
しかし、罰を使うと恨みだけが残る可能性もあります。
できるだけ悪いことができない環境作り。悪いことを別の事に置き換えてご褒美をあげるなど、罰を使わない工夫が必要だと考えます。
その他情報
※正の強化・負の強化・正の弱化・負の弱化という内容もありますが、難しくなるのを避けてこの記事では扱っていません。
※1 ご褒美=正の強化子・好子 罰=負の強化子・嫌子
※2 ABC分析=Antecedent(きっかけ)・Behavior(行動)・Consequence(結果)
・ABAはApplied Behavior Analysisの略
・アメリカの心理学者スキナーの「行動学」を元にした学問
・関連資格:認定ABAセラピスト、ABAT
・日本で有名な応用行動分析学者:奥田健次さん