概要
2011年発行
応用行動分析学による「褒めて伸ばす」子育て本です。
一時的に通用する細かいテクニックではなく
長い目で見てできる子に育てる
そんな内容となっています。
応用行動分析学者の奥田健次さんが培ってきた知識がギュッとつまった1冊です。
内容
片付け大好きな子に育てる褒め方
掃除や片付けは大変なもの・嫌なもの
と思っている人がいます。そういう人の方が多いかも。
それは、片付けをしないと怒られる・掃除をしなさいとうるさく言われる。
そういった経験が積み重なっているからかもしれません。
片付け=大変・嫌だ
という結びつきになってしまいます。
しかし、片付けをすれば褒められる。良いことがある。となれば違います。
自分から片付けをするようになります。
そのためには一時的ではなく粘り強くタイミングを作って褒めることが大切。
具体的に例を示します。
片付けの量が沢山だと大変です。
スモールステップで考えてみましょう!
まずは、達成感を得やすくするために10個片付けるうちの7個くらいをお母さんがやって、最後の3つくらいを子供にやらせます。「片付いた!」というスッキリ感も味わってもらいます。
もちろんその時片付けができたら褒めてあげましょう。
スッキリ感+褒め褒めのWごほうびです。
この時の注意点が、褒めた本人が満足するだけではダメということ。
子どもが嬉しそうにしているかどうかが、成功の基準です。
片付けに限らず、着替えやトイレなど新しいことを身に付けさせる時はこの褒め褒め作戦が有効です。「叱り」は全く必要ありません。
ただ、できるまで粘り強く様子を見ながら褒めていく我慢強さは必要です。
約束を破って叱る<できた時に褒める
子どもと何かしらの約束をする時がありますよね。
ゲームの時間や、ご飯の後の歯磨きなど・・・
それを破った時に親が警察官のように取り締まる
そんな光景は想像できるのではないでしょうか?
こういう時にありがちなのが
頑張って約束を守った時に褒められない、です。
褒められる(良い事がある)→約束が定着する
褒められない(良い事が無い)→約束が定着しない
という図式を考えると
できていないことを指摘することの無意味さが分かります。
これは大人でも当てはまるのではないでしょうか?
また褒めるのは即時、です
歯磨きの準備に行くために洗面台に向かおうとするその瞬間を見逃さないで褒めます。
前提として、子どもは約束を守らないのが当たり前ということを覚えておくと気持ちが楽になります。
声掛けの促し+褒めるでもOKです。
「8時になったらゲームをやめようね」
ゲームを切り上げた瞬間を見逃さずに褒めます。
ただ、ずっと子どもの様子を見ているという訳にもいかないと思います。
練習だと思って褒めるタイミングを見つけるスキルを磨いていくと◎です。
褒め方はスキルです。
毎回同じ褒め言葉ではなく、何通りもの褒め方を試しましょう。
そして具体的に褒めましょう。
子どもによって、何が嬉しいかは違います。
褒められたときの子どもの表情を見てみましょう。
「〇〇ちゃんが落とした消しゴムを拾ってくれていたね!」
「〇〇くんは発明家だね!すごいアイディアだ!」
練習してたくさんのレパートリーを増やしていきましょう。
もし失敗しても、挑戦したことを褒めましょう!
「クセ」の直し方
手をつないでいて、急にその手をはなしてどこかに行ってしまう子がいたとします。
町中でそのようなことがあったら、重大な事故につながるかもしれません。
それを無くすには
そうならない環境を作る
これにつきます。
手を振りほどかれるのだったら、ぎゅっと離されないような握り方にしてみましょう。
こういった行動はすぐになくならないものです。
100回連続アウト!(何回やってもうまくいかない)
を目指してみましょう。
どうやっても手を振りほどけないと諦めさせる勢いで。
すると
薬を飲む・歯磨きをする
など、子どもからやらなければいけないことはどうすればいいだろう?
といった疑問が出てきます。
この時も「わがままが通らないぞ」
ということを理解させることが大事です。
ただ叱るのではなくニコニコ笑顔の表情で。
怖い表情だと、薬を飲む・歯磨きをする=嫌な事
に結び付いてしまいます。
ガシっと子どもを抑えて薬を飲ませます。
子どもの力が緩んだら、抑える力も抜いてくださいね。
別の手段に変えることも有効です。
鼻をほじるクセをなおしたいとします。
「ダメ」と叱るのではなく
「ほじりたくなったら洗面台でほじって、手を洗ってね」
としたらどうでしょうか?
そちらのほうが有効なことが多いです。
性器いじりなどの行動も
そのたびに手を洗いに行かせるなどしてみましょう。
面倒くさい行動をはさみます。
またそういうクセは遊びのレパートリーが少ない可能性があります。
外で色んな遊びを経験させることで、悪いクセが減るかもしれません。
次は、友達を叩くなどの行動があった場合を考えます。
この時にダメなのが、性格のせいにしてしまうことです。
友達を叩く行為はもしかしたら、自分の言いたいことが伝わらずもうどうしようもなくて手が出てしまっているのかもしれません。
なぜそういう行動をしてしまうのか?
を見極めて行動の特徴にフォーカスして支援してあげましょう。
自分からやる子に育てる
遊んでいる子に対して中断させようとするときに
子どもは何としてでも先延ばしにしようとしてくることがあります。
それに負けてはいけません!
親や先生が子どもの言うとおりになってしまいます。
交渉するのも、子どもと同じ土俵に立ってしまいます。
(年齢や時と場合にもよります。ここでは~低学年の小さい子を想定しています)
何よりも、子どもに構ってあげていることが子どもにとっては嬉しいことになってしまいます。
一回言って効かなければ
「先に食べちゃうよ~いただきます~」
と言って話を切り上げましょう。
必要なことを手短に伝え、それが出来たら得をする(お母さんと一緒におしゃべりができる)
ようにしてあげましょう。
出来なかったら叱るのではなく、得が無くなる、それだけです。
「早くしなさい!」
の言い換えは
「3分で着替えられたらりんごを一切れおまけだよ」
「お父さんと競争!どっちが早いかな~」
「ご飯を食べたら一緒に遊ぼうね」
「〇〇ちゃん来ないなら先に大好きなフルーツを食べちゃおう」
などなど、どれも「叱り」は1つもありません。
次はやってはいけない行動の対処の仕方です。
電車での座席でぴょんぴょん跳ねるのを止めさせたい・・・
「やめなさい」
「は~い」といってまだやり続ける。
これはイエローカードを出して、そのままの状態です。
約束を破ったらレッドカード
なにがなんでも、です。
具体的には
電車に乗って楽しくなってピョンピョン跳ねたとします
「それをやるんだったら降りるよ」
1回目の警告(約束)です。
次に跳ねた時は
「荷物をまとめて降ります」
子どもは大泣きしたり「もうやらないから」と反省の色を見せるかもしれません。
約束は約束
レッドカードで一発退場。
駅から降りて、そのまま帰ってしまいましょう。
面倒くさいかもしれませんが親も約束を守ることが大事です。
子どもは言われたことが本当に起きると思ってもらいます。
学校でもこのようなことはあって
「友達を叩いたら、校長室で校長先生とお話ね」
といったら本当に校長室に連れていきます。
ちょっとだけ叩いただけ・・・という甘えは許されません。
ただの「脅し」にならないように気を付けてください。
どちらの例も「叱る」ことはせず
いけないことをしたら、望んでいた事ができない
という結果に繋がったということがポイントです。
要求が通らないことにキレてしまっても、強引さが必要です。
キレることが身に付いてしまう方が怖いのです。
最後一つ
何が何でも子どもを従わせるというわけではない
ということをお話します。
一緒にゲームをする時や、外食をする時など
子どもが選ぶ機会があってもいいのです。
ただ全体を俯瞰して、「要求が通らないこともある」
この側面が必ずあるということを覚えてもらうことが大切なのです。
ここで紹介した支援以外にも沢山の方法がこの本には載っています。
どれも応用行動分析の考え方に則っていて、
子どもの言葉ではなく行動に着目しています。
子どもにとっての良い事(ご褒美)悪い事(罰)
を見抜く力が身に付けば
自ずと解決策は見えてくると思います。
是非保護者・先生ともに一読してみることをおすすめします!
著者
・奥田健次さん