【本紹介】子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決

教員向け

概要

2022年発行

応用行動分析学者の奥田健次先生の本です。

これまでにいくつも本を出されてきましたが、内容はそれらと近いものです。
徹底的な応用行動分析の手法に基づいた実践や考え方がつまっています。

もし奥田健次先生の本を1冊も読んだことがなければ、まずこの1冊をおすすめします。

内容

これだけは絶対に守りたい20のこと
と題して子育ての原理原則が紹介されています。

ここではその中のいくつかを要約して説明します。

親が行動を変える

朝起きるのが遅く、起きてからずっとゲームをしている不登校の子がいました。

お母さんには

「『学校へ行かなくてもいいから起きなさい』と言って起こしてください。そして『行かなくてもいいからゲームはないからね』言うのはそれだけです」

と説明しました。

泣くかもしれない、怒るかもしれない。でもそれだけを言いなさい、と。

お母さんは「そんなこと、やるんですか!」
と怒ったそうです。

・・・しかしある日、それを実行したお母さんが「ありがとうございます!」といって奥田さんのところへ来ました。言われたことを実行し、なんと3日で学校へ行けるようになったのです。

これは、アドバイスを聞いたお母さんの頑張りです。
ルールを提示して我慢強く守らせるのはとても難しい事なのです。

「まずは聞く耳をもってください」
奥田さんはそう言っています。

お家のルールの作り方・守り方

親の財布から100円でも盗んだら、窃盗犯

ダメなものはダメ、たとえそれが4歳でも社会のルールを教えていかなければいけません。

社会に出て困らないように
こういった「いけないこと」を具体的なルールとして守らせるのが大切です。

例えば

「体調が悪くて学校を休んだら、必ず病院に行きます」
こういうルールを作ったとします。

子どもが突然「今日学校を休みたい」と言ってきたとして、理由はまだ分かりません。
さぼりたいからかもしれないし、学校で何か嫌なことがあったのかもしれません。

そんな時に病院に行くのは嫌がったり、暴れたりするかもしれません。
しかし、もしそのルールが身に付いていたのなら
学校を休む=病院に行く
がセットになっていることで、簡単には学校を休みたがらなくなるはずです。

そのルールをいかに守らせるか?が大切なポイントになってきます。
ルール違反を一度認めてしまうと非常に大変です。
例外が認められないことで子供に”ルールを守らないと損をする”ことを学習させたいのです。

このルールは子供が大きくなるにつれ学習させることが難しくなってきます。

この本では

8歳までに、やってはいけないこととやってもいいことのちがいを徹底的に教えないといけない

と書かれています。

私の経験からも、2、3年生までにこういったルールを守らせたいなと思います。

主導権は、あくまでも親です。
子どものいいなりになってはいけません。

具体的なルールの守らせ方

”びっくりショッキング法”

は具体的に詳しくやり方が書かれています。※幼児期限定の方法です。

また、ルールを守れたら褒める
これは絶対にセットということは覚えておきましょう。

目指す家族の在り方

13歳の娘が仲良しのアキちゃんから借りていた漫画を返す約束をしていたのに忘れてしまいました。
夜10時に「何か忘れてない?」とアキちゃんからの電話がかかってきて、忘れていたことを謝りました。アキちゃんは怒っていて、すぐに返してほしそうな様子です。

この時に親が「明日ちゃんと謝ったらいいんじゃない?今日はもう遅いし」
と言ったらどうでしょうか?

たった漫画一冊、ささいなことかもしれません。

ここでは「コロローソの3つの家族」
というタイプの分け方が説明されています。

その中であたたかく包容力があり、なおかつしっかりとした枠組み(原理原則)がある
「土台家族」が目指すべき家族として説明されています。

自分がしたことの責任を自分で取る。
そんな経験を積み重ねることで、様々な問題に対する解決能力が身に付き
自己肯定感も高まってくるのです。

先ほどの漫画の例では
アキちゃんの家に漫画を返したいということを親が連絡する。
娘には「誠意を見せようよ」と伝える。
それが「土台家族」の対応です。

他の章で触れられている「子供の自立」にも繋がっていきます。

子育てに役立つ魔法、催眠

子どもが疲れていたり、ケガをしたりしたとします。

よくそれを気にかけて「大丈夫?」「どうしたの?」「痛いの?」
と優しく声をかける対応が見られます。

そんな時奥田先生は

”がばいばあちゃんになろう”

と称してユーモアで対処しています。

具体的には奥田先生が保育実習の時、ケガした子に

「こっちおいで、ハイ消毒!、洗って、絆創膏ペタッと貼って、鼻くそ鼻くそ飛んでけ!よっしゃ!もう治った!」こちょこちょ・・・

と子どもに”魔法”をかけました。

気にして「痛い?」「大丈夫?」と対応してずっと泣き続けている子もいるのに対して
この魔法を使えば1分で泣き止んだそうです。

病は気から

そんな気持ちで接していくといいかもしれません。

効果的な目標設定(スモールステップ)

保健室登校」というものをご存じでしょうか?

登校しても教室には行けないため、保健室で過ごすことを言います。

不登校を防ぐためにこういった手法が取られていることがあります。

しかしこの手法にはデメリットがあります。

もし、保健室にいたらゴロゴロできたり遊べたり、楽しい場所となってしまったらどうでしょうか?
本当だったらクラスで過ごせるのに、少し嫌なことがあっただけで保健室に行くようなことになってしまいます。

そこで、お絵かき・漫画何をしてもいいから教室にいる
そして、なにがなんでもお母さんが教室に45分居させる(本では過激な表現で書かれています)

ということをお願いしました。

なんとお母さんは頑張って45分の戦いに打ち勝ち、見事教室に居させることに成功します。

まずは45分、教室の自分の椅子に座っていたら◎です。

お母さんがついていてもかまいません。

途中退場してしまうこともあるでしょう(その場合は×です)

とにかく、少しずつでも◎を増やしていけることを目指しましょう。

この時の目標設定は非常に大事です。
子どもが一段一段登っていけるようにしっかりと支えていきたいです。

適切な叱り方

以前奥田さんの本で「叱りゼロで自分からやる子に育てる本」

というものを紹介しました。

ここでいう「叱り方」とは、一般的に言う「叱り」ではなく
いけないことをしたら嫌なことが起こる、ようにさせる「親の行動」です。

友達を叩く子がいた時に

「今度からしないようにね」
「何回言ったら分かるの?」
「もう一回やったら怒るよ!」

など、脅し・警告(イエローカード)

を出す教員や親は多いです。

しかしここで有効的なのが

レッドカードを出す(いけない行動をしたときに悪い結果になる)ことなのです。

例えば

「ゲーム時間無し」
「集めているカードを捨てる」

などです。その子が悪い結果になったと思うような罰を用意するわけです。

これは過激なようにも思いますが、強く叱ったり暴力をしているわけではありません。

そのくらいダメなこと(人を叩く)をしたんだよということを学ばなければいけません。

わがままとがまん

サッカーが上手くなりたい!
モテたい!

など〇〇したい!という気持ちが強くなった時に、わがままが出てきます。
それ自体は悪い事ではありません。(わがまま→動因と考えます)

もちろんそれが物を盗みたい・人を叩きたい、など悪い行為ならば別の動因に置き換えなければいけません。

これが強い子もいれば、弱い子もいます。

がまんが強い子はブレーキが強いので、思いっきりわがまま=アクセルを解放させてあげたほうがいいでしょう。

なので子供によってもそうですが、そのバランスが大切なわけです。

そのほかに・・・

まだまだここで紹介しているのはこの本の半分以下の内容です。

感情コントロールや、スマホを子どもに与えることについてなど
具体的な例を交えながらおもしろく解説されています。

過激な話や表現もありますが、タイトル通り「子育ての原理原則」がギュッと詰まった一冊です。

著者

・奥田健次さん

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