概要
2009年初版と少し昔の本です。しかし・・・
SST(ソーシャルスキルトレーニング)の授業で定番のものがぎっしりと詰まっています!
よくあるロールプレイを用いるSSTだけではなく、身体を動かしたり自己認知の活動なども多くのっているので幅広い教材や指導が載っています。
大まかな流れは
- SSTの紹介
- 自己認知スキル
- コミュニケーションスキル
- 社会的行動スキル
の順番で紹介されています。
指導の目安の時間・人数・目的
も書いてあるのですぐに実践しやすいのもポイントです。
対象は幼児~高学年と幅広く扱っているので、小学校・保育の現場で有効です。
おすすめ教材&指導
本の中の指導の一部を紹介します。
有名どころばかりなので、是非やってみてください!
※本で紹介しているものを載せていますが、私自身が指導した内容や経験に沿って説明します。
ブラックボックス
段ボールに色画用紙を張り付けて、穴を空けましょう。
中にあるものを触ってあてるゲームです。
ちくちくするタワシ
もこもこするタオル
ツルツルするボール
など、様々な感触の物を入れてみましょう。
触った感触を言語化したり、それが好きかどうかを伝えさせるのが◎です。
なんだか丸っぽい、つるつるもしてるかな~
僕は好きな触り心地だよ。
「感覚」の学習ですが、好きなものが人によって違うことや、感じたことの言語化をすることの学習にもなります。
年齢や発達の様子に応じて、入れる物を変えたり、部分的な写真をヒントにして、分かりやすくする工夫などができます。
忍者の修行(サーキットトレーニング)
4つ以上の運動ブースを作り、それぞれの場所で指定された運動をします。
1周出来たら花丸やシールなどのご褒美があるとやる気に繋がります。
30秒~60秒を1セット、1周したら3分休憩など時間を決めると良いでしょう。
- マットでごろごろ
- トランポリン→やりながらボールキャッチ
- 線歩き、平均台→前歩き・後ろ歩き・何かを持ちながら
- トンネルくぐり、くものすくぐり
- わっかジャンプ
- スクーターボード
- 段ボールキャタピラー
やる活動は組み合わせや工夫次第で無限大!
楽しみながらできる活動を考えてみましょう。
アクションすごろく
空白のすごろくを用意して
早口言葉を言う。エアなわとび10回。深呼吸3回。
などなどお題を書いていきます。
お題を子供に考えてもらったり、お題カードを作り「カードを引く」マスなどを用意したりすれば指導の幅も広がります!
勝ち負けは気にせずルールを守って取り組むことなど学習できます。
アイスブレイクにもぴったり。
どっちが好き?
「夏休み」と「冬休み」あなたはどっちが好き?
2択のお題を選ばせて、なんで選んだか、理由も言わせます。
説明の練習、他者認知の学習ができます。
イスやマットを使って2か所ブースを作り、2つのイラスト(夏休み→プール、すいか 冬休み→雪だるま、こたつにみかん)などを用意すると分かりやすいです。1回ごとに動かせることで、ずっと座っているストレスも減らせます。
この活動はお題が一番のミソです。子供に合わせて分かりやすい・自分だったらどうか考えるのが楽しい。と思わせられれば最高です!
ネットに沢山お題が転がっているので、そこから探すのもありですね。
小学生であれば学校ネタは受けやすいです。
例:「1日だけ1時間休み時間が増える」「1日だけおかわり自由の日」どっちがほしい?など
→暇つぶしに抜群!面白い100の2択質問で飲み会・待ち時間・沈黙を盛り上げようhttps://happymail.co.jp/happylife/special-feature/kill-time-question/
自己認知のワークシート
自分はどんな性格か、ワークシートを通して考えさせます。
どちらかといえば、大人と1対1で考える活動ですが、高学年などでお互いのワークシートを見あったり、質問しあったりするのもいいですね。
ソーシャルスキルの定番です。
話の聞き方
「ぐーぴたぴん」などわかりやすい語呂で話を聞く姿勢を覚えてもらいます。
規律を整えるということで様々な学級で取り入れられてることと思います。
イラストを見せると効果的です。悪い例もあるといいかもしれません。
合図を言ったら反射的にその姿勢になる!
くらいのレベルで身に付けさせると良いスキルです。
できれば毎日練習するのが理想です。
伝達ゲーム
これも定番の活動です。
基本は子供同士ペアになって、仕切りを作り、A君は伝える役・B君は聞いて作る役
などに分けます。
ブロックや図形など、「真ん中に置いて」「上は黄色だよ」など指示して目的の物を作り上げます。
バリエーションは多いですが一例を説明します。
B君はウサギが書かれていないワークシートを見ています。ウサギのカードをどこに置くか、A君から教えてもらいます。
A「ウサギが左にいるよ」
B「え?左のどこ?」
A「あ‼左の上だ」
B「何色のウサギ?」
A「灰色だよ。あとは真ん中にいるのはピンクのやつ」
B「真ん中って?」
A「どまんなかのところ!」
などのやりとりを行うことで質問したり、相手の立場に立って考えたりする力を養います。
イエス ノークイズ
野菜のカードをもっているとします。
丸いですか?→「いいえ」
赤いですか?→「はい」
ウサギが好きですか?→「はい!」
それはにんじんです!
など、「はいか、いいえで答えられる」質問を繰り返して答えをあてていくゲームです。少人数でクイズをだしあうと盛り上がります!
物のカテゴリ分け、概念、質問する力、想像する力が養われます。
市販されている「わたしはなあに?」という教材は1000円程度で買えて、カテゴリー別のシートや絵カードが沢山入っていておすすめです。
スモールステップ(勝ち負け)
ばばぬき・UNO・じゃんけん・カードゲーム・その他ボードゲーム各種
などなどで勝負を繰り返し勝ち負けへのこだわりを軽減させます。
はじめは負けて、パニックやかんしゃくを起こすことでも、何回もやることでそれが少しずつおさまってきます。負けた時の合言葉「まあいいか」などをおまじないのように何回も声かけることで、辛抱強さを身に付けさせていきます。
実力が関係なく、完全に運+すぐに逆転、誰でもわかりやすい「坊主めくり」
はこの勝ち負けの学習に最適です。
転がし中当て
保育のブログで紹介されています
→https://hoiku-is.jp/article/detail/1259/
テープなどで地面に大きな円を作り、外の人は当てる・中の人は逃げるを繰り返します。
投げるのは禁止にすることで、安全に幼児~楽しく遊べます。
ボールを2個にする。バランスボールをころがす。など工夫するとさらに楽しくなるでしょう。
粗大運動・ルールを守る・勝ち負け、の学習にぴったり。
カード合わせ(4カード、そっとおやすみ)
任天堂HPでは「スローモー」という名前のゲームらしいです。別名「うすのろ」
→https://www.nintendo.com/jp/others/playing_cards/howtoplay/dull_person/index.html
トランプとお手玉があれば簡単にできます。
「せーの」と息を合わせてトランプをわたすので、周りを見て合わせる練習になります。
少しだけ違いますが似たルールで「そっとおやすみ」というボードゲームもおすすめです↓
ムシムシマンション
愛知県総合教育センターより
→https://apec.aichi-c.ed.jp/kenkyu/chousa/kiyo/95syuu/kokoro/ex1-4.html
ムシムシ教室の席替えですが、本質的には同じです。
「情報統合」と言われたりもします。
「チョウはトンボの左です」などのヒントカードを一人ずつ言い合って、虫の絵カードを持った人がカードを貼って、座席を完成させます。
虫を動物やキャラクター(ポケモン等)に変えたり、地図や観覧車などを埋めるようにしたり、バリエーションを変えられます。
やや難しめなので、小学2年生~で、字が読める・論理的な思考ができることを前提とした方が良いです。
「はい」と挙手をして当てられたら「カブトムシはうしろの一番左の席です」など言わせる。「絵のカードがあります」と挙手をしたら、それを貼りに行ける。などのルールをキッチリと決めて進めると◎です。
自分が言うべき時まで待つ・相談しながら考える・話型通りに話す練習になります。
SSTすごろく
すごろくのマスに、「配膳で給食をこぼしてしまった、どうする?」などの困難の解決場面、「自分や友達の良い所を言う」などの自己認知・他者認知の課題を書き込みます。
カード式にしてもいいですね。難しいので高学年向きです。
ちょうど良いフレンドシップアドベンチャーというSSTすごろくゲームがありますが、値が張るので、自作がおすすめです。
「こんなときどうする?」のカードを活用してもいいですね。
自分の意見を言うだけでなく、他者の意見を聞き
「そうなんだ」と相槌を打つ、意見を否定しない・・・などめあてを伝えて楽しく話し合える活動になると良いです。
著者
・安住ゆう子さん
東京学芸大学大学院修士課程学校教育専攻発達心理学講座修了
NPO法人フトゥーロLD発達相談センターかながわ所長
公認心理師
特別支援教育士SV
・三島節子さん
NPOフトゥーロLD発達相談センターかながわ